実はダイエットを成功させるためには、カロリー制限は必ずしも必要ではありません。この記事では、その理由を科学的根拠と共に解説します。
一般的にダイエットというのは食事制限をして摂取カロリーを減らすことだと思われがちです。もちろん、摂取カロリー<消費カロリーの状態を維持すれば体重が減るのは紛れもない真実です。
ですが、私自身を含め、これだけ多くの人々がダイエットに四苦八苦し、効果が出なくて苦しんできたのも事実です。人間というのは頭で分かっていてもその通りに行動できるとは限らないのです。思考回路というのはとても複雑な物なので、ロボットのようにスイッチのオン/オフで簡単に設定できるような物ではないということです。
何度もお伝えしているように、できないのは意志が弱いからではありません。もちろん現状を何一つ変えずに好きなものを食べ放題で痩せるのは不可能ですが、対策を立てて無理のないダイエットを成功させるのは可能です。カロリー制限だけにこだわって、自分を苦しめるダイエットは終わりにしましょう。
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カロリー制限で痩せるのが難しい理由
私のおすすめする「ゆるパレオダイエット」では、単にカロリーを減らすだけの食事制限は推奨していません。なぜならカロリー制限で痩せるというのは机上の空論に近く、一般的な人には難しいからです。カロリー制限で痩せるのが難しい理由を科学的根拠とともに5つ挙げてみました。
長続きしない
カロリー制限は長期間続けるのが難しく、途中で挫折することが多いです。カロリー制限を続けたグループの多くが最終的に元の食事量に戻ってしまうという研究結果も出ています。これは、食欲を抑えるレプチンというホルモンが減少し、食欲が増すためです。
ダイエットのカロリー制限が長続きしない理由はいくつかあります
- 心理的ストレス: カロリー制限は、食べ物に対する欲求を抑えることを強制し、これが心理的なストレスを引き起こします。このストレスが続くと、意志力が弱まり、過食や暴食に繋がりやすくなります。
- 満腹感の欠如: カロリー制限をすると、十分な満腹感を得られないことが多く、常に空腹を感じるため、食事の誘惑に負けやすくなります。
- 代謝の低下: 長期間のカロリー制限は、身体がエネルギーを節約しようとして基礎代謝率を低下させることがあります。同じカロリー摂取量でも体重が減りにくくなります。
- 栄養バランスの欠如: 極端なカロリー制限は、必要な栄養素を十分に摂取できないリスクがあり、健康を害することがあります。このような栄養不足は、体調不良や疲労感を引き起こし、ダイエットの継続を難しくします。
- 社会的要因: 食事は社会的な行動でもあり、友人や家族との食事の場面でカロリー制限を続けるのは大変です。また、外食やイベントなどでの食事は、カロリーを制限するのが難しくなります。
- 一時的な対策: 多くの人がダイエットを短期間で結果を出すための一時的な対策と考えがちで、長期的なライフスタイルの変化として取り組まないため、ダイエットが終了すると元の食生活に戻ってしまうことがあります。
計算通りに痩せられない
摂取カロリーを減らしても、消費カロリーも減少するため、期待通りに体脂肪を減らせません。基礎代謝が下がり、エネルギー消費が減るためです。
カロリー制限をしても計算通りに痩せられない理由はいくつかあります
- 基礎代謝の変動: 長期間のカロリー制限は、身体が飢餓状態と認識し、エネルギー消費を節約するために基礎代謝が低下することがあります。これにより、同じカロリー制限をしても体重が減りにくくなります。
- カロリー計算の不正確さ: 食品のカロリー表示や自分でのカロリー計算が不正確であることがあり、実際の摂取カロリーが計算よりも多くなっている場合があります。
- エネルギー消費の過小評価: 日常の活動や運動によるエネルギー消費が過小評価されている場合、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが取れず、思ったように体重が減らないことがあります。
- 身体の適応: 身体はカロリー制限に適応し、エネルギー効率を上げることで、同じ量のカロリー摂取でも体重が減らなくなることがあります。例えば、消化吸収の効率が上がることで、摂取したカロリーがより多く身体に取り込まれるようになります。
- ホルモンの変化: カロリー制限はホルモンバランスに影響を与え、特にレプチンやグレリンなどの食欲や代謝を調節するホルモンが変動することがあります。そのため食欲が増加し、代謝が低下することで、体重減少が停滞することがあります。
- 筋肉量の減少: カロリー制限によって筋肉量が減少すると、基礎代謝が低下します。筋肉はエネルギーを多く消費するため、筋肉量の減少は総エネルギー消費の低下につながります。
- ストレスと睡眠不足: ストレスや睡眠不足は体重減少を妨げる要因となります。これらはホルモンバランスに影響を与え、脂肪の蓄積を促進することがあります。
筋肉や骨が減る
カロリー制限を続けると、筋肉のタンパク質がエネルギーとして使われ、筋肉量が減少します。そのため基礎代謝がさらに下がり、痩せにくくなります。また、骨密度も低下し、骨折のリスクが増します。
カロリー制限で筋肉や骨が減る理由には以下のようなものがあります
- エネルギー不足: カロリー制限をすると、身体はエネルギー不足を補うために筋肉を分解してアミノ酸を供給しようとします。これは特にタンパク質の摂取が不足している場合に顕著です。筋肉はエネルギーを消費するため、カロリー制限時には身体が筋肉を減らしてエネルギー消費を抑えようとします。
- 栄養不足: 極端なカロリー制限は、必要な栄養素(タンパク質、カルシウム、ビタミンDなど)の不足を招きやすくなります。これにより、筋肉の維持や修復が妨げられ、骨の健康も損なわれることがあります。
- ホルモンの変化: カロリー制限は、ホルモンバランスに影響を与えることがあります。例えば、カロリー制限により成長ホルモンや性ホルモンの分泌が減少すると、筋肉と骨の維持が困難になります。また、ストレスホルモン(コルチゾール)の増加は、筋肉分解を促進し、骨密度を低下させることがあります。
- 運動不足: カロリー制限中に運動量が減少すると、筋肉量の維持が難しくなります。筋肉は使用されないと萎縮するため、運動不足は筋肉量の減少を招きます。また、骨も適度な負荷がかかることで強化されるため、運動不足は骨の健康にも悪影響を及ぼします。
- 代謝の低下: カロリー制限が長期間続くと、基礎代謝が低下し、エネルギー消費が減少します。これは筋肉量の減少を伴い、さらに基礎代謝を低下させる悪循環を引き起こすことがあります。
カロリーの把握が難しい
自己申告によるカロリー計算は不正確で、実際の摂取量と大きく異なることが多いです。また、食品のカロリー表示には誤差があり、正確な管理は困難です。
カロリーの把握が難しい理由には以下のようなものがあります
- 食品のカロリー表示の不正確さ: 市販の食品やレストランのメニューに記載されているカロリー情報が必ずしも正確ではないことがあります。また、調理方法やレシピによってもカロリーが変わるため、実際の摂取カロリーを正確に把握するのは難しいです。
- 盛り付けの分量の問題: 食品の分量を正確に測ることが難しい場合があります。例えば、外食時には器のサイズが大きくなることがあり、家庭での計量も正確さを欠くことがあります。
- 食材のバリエーション: 同じ種類の食材でも、産地や品種、収穫時期などによってカロリーが異なることがあります。このため、食材ごとのカロリー差を正確に把握するのは困難です。
- 隠れたカロリー: ソース、ドレッシング、調味料、油など、見過ごされがちな食材にもカロリーが含まれており、これらを計算に含めるのを忘れがちです。
- 吸収率の個人差: 同じ食べ物を摂取しても、消化吸収率は人によって異なります。これにより、同じカロリー量を摂取しても実際に体内に取り込まれるエネルギー量が異なることがあります。
- 日常生活の変動: 日々の活動量や運動量が一定ではないため、消費カロリーも変動します。このため、正確なカロリーバランスを維持するのが難しいです。
- 調理方法の違い: 同じ食材でも調理方法(焼く、揚げる、煮るなど)によってカロリーが変わります。例えば、揚げ物は油を多く吸収するためカロリーが高くなります。
- 精神的な要因: ストレスや感情の変動が食欲や食事の選択に影響を与え、計画通りのカロリー摂取が難しくなることがあります。
- 誤差の積み重ね: 少しずつの誤差が積み重なることで、1日の総摂取カロリーが大きくずれることがあります。
油抜きダイエットの落とし穴
油脂類は他の栄養素に比べて高カロリーなので、カロリー制限では悪者にされがちです。油抜きダイエットなどもありますよね。でも、油も体にとっては重要な栄養素です。ダイエット中でも、健康的な脂質を適切に摂取することが、健康と体の機能を維持するために重要です。
アボカド、ナッツ、種子、オリーブオイル、ココナッツオイル、脂肪分の多い魚など、良質な脂肪源をバランスよく取り入れることが推奨されます。体に良くない油を減らし、良い油は積極的に摂っていきましょう。ダイエット中でも脂質が必要な理由は以下の通りです
- 必須脂肪酸の摂取: 脂質は必須脂肪酸(オメガ-3脂肪酸やオメガ-6脂肪酸)の供給源です。これらは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。必須脂肪酸は、細胞膜の構築、脳機能、免疫系の働きに重要です。
- 脂溶性ビタミンの吸収: 脂質はビタミンA、D、E、Kといった脂溶性ビタミンの吸収を助けます。これらのビタミンは、視力、骨の健康、抗酸化作用、血液凝固など、多くの重要な生理機能に関与しています。
- ホルモンの生成: 脂質はホルモンの生成に必要です。特に、ステロイドホルモン(エストロゲン、テストステロン、コルチゾールなど)は脂質から作られます。これらのホルモンは代謝、性機能、ストレス応答などに関与します。
- エネルギー供給: 脂質は高エネルギー源であり、1グラムあたり9キロカロリーを提供します。脂質は長時間のエネルギー供給を可能にし、特に低強度の持続的な運動や空腹時に役立ちます。
- 満腹感の促進: 脂質は消化に時間がかかるため、満腹感を持続させやすく、過食を防ぐのに役立ちます。適切な量の脂質を摂取することで、食欲をコントロールしやすくなります。
- 細胞機能の維持: 脂質は細胞膜の主要な構成要素であり、細胞の正常な機能を維持するために必要です。細胞膜の柔軟性と流動性は、栄養素や老廃物の移動を可能にし、細胞の健康を保ちます。
- 体温調節と保護: 体脂肪は体温を維持するのに役立ち、内臓を保護するクッションとして機能します。極端に脂質を減らすと、これらの保護機能が損なわれる可能性があります。
- 脳の健康: 脳は脂質で構成されており、特にオメガ-3脂肪酸は脳の機能と発達に重要です。適切な脂質の摂取は、認知機能や精神的な健康の維持に貢献します。
カロリー制限をしないダイエット対策とは
対策の一つが、満腹感を味方にすることです。満腹感に従って食事を摂ることが、最適な食事量の目安になります。
とはいえ、私も最初の頃はそうでしたが、一般的に自分自身の満腹感というものを信頼できないことも多いのではないでしょうか?ダイエッターというのは常に食べ過ぎの恐怖と戦っているからだと思います。
そのための新しいアプローチとして、満腹中枢を狂わせる超加工食品などの体にとって適切でない食品を減らし、動物本来の自然な満腹感を取り戻す必要があります。
加えて糖質を控え、タンパク質と脂質をしっかり摂ることで、満腹感を正しく感じることができます。
超加工食品についてはこちら→超加工食品がダイエットにNGな理由/ゆるパレオダイエット
カロリー制限ではなく、満腹感に従うことが重要な理由は次の通りです
- 自然な食欲調節: 満腹感に従うことで、身体が自然に必要なエネルギー量を調節できます。カロリー制限を意識せずに、自分の体が本当に必要としている量を食べることができます。
- 持続可能な食習慣: 満腹感に従う食事法は、長期的に続けやすいです。カロリー制限はストレスを伴いやすく、続けるのが難しいことがありますが、満腹感に基づく食事はより自然でストレスが少ないです。
- 過食の防止: 満腹感に注意を払うことで、過食を防ぐことができます。カロリー制限をすると、食べ物への執着が増し、制限が解除された際に過食しやすくなります。
- 心理的健康の向上: 満腹感に従うことで、食事に対するポジティブな態度を持つことができます。カロリー制限は食事を制限する感覚を強調しがちですが、満腹感に従うことで食事を楽しむことができます。
- 栄養バランスの改善: 満腹感に従うことで、体が本当に必要としている栄養素をバランスよく摂取できるようになります。カロリー制限は特定の栄養素が不足しがちですが、満腹感に基づく食事は自然に多様な食品を選ぶことを促します。
- ホルモンバランスの安定: 満腹感に従う食事は、ホルモンバランスの維持に役立ちます。カロリー制限はストレスホルモン(コルチゾール)を増加させることがあり、これが体重管理を難しくする一因となります。
- エネルギーレベルの維持: 満腹感に従うことで、安定したエネルギーレベルを保つことができます。カロリー制限はしばしばエネルギー不足を引き起こし、疲労感や集中力の低下を招きます。
- 体重の自然な管理: 満腹感に基づく食事は、体重の自然なバランスを保つ助けとなります。体が必要とするエネルギーと栄養を適切に摂取することで、健康的な体重維持が可能になります。
リバウンドの防止
カロリー制限によるリバウンドは、筋肉の減少と基礎代謝の低下が原因です。体重の増減を繰り返すと、血管が傷つき、死亡リスクが高まります。
カロリー制限に頼らず、健康的な食事と運動を心がけることが、持続可能なダイエット成功の鍵です。
リバウンドの理由
- 代謝の低下: カロリー制限が続くと、体は飢餓状態と認識し、エネルギー消費を抑えるために代謝を低下させます。カロリー消費が減少し、ダイエット終了後に同じ食事量に戻すと体重が増えやすくなります。
- 筋肉量の減少: カロリー制限によって筋肉量が減少すると、基礎代謝が低下します。筋肉はエネルギーを多く消費するため、筋肉量の減少はカロリー消費の低下につながります。
- ホルモンの変動: カロリー制限は食欲調節ホルモン(レプチンやグレリン)に影響を与え、食欲が増加することがあります。ダイエット終了後に食欲が抑えきれず過食しやすくなります。
- 心理的ストレス: 長期間のカロリー制限はストレスを引き起こし、食事に対する執着を増加させます。制限が解除されると、その反動で過食しやすくなります。
- 栄養不足: カロリー制限が続くと、必要な栄養素を十分に摂取できなくなり、身体が栄養を欲するようになります。これにより、制限が解除された際に栄養の過剰摂取が起こりやすくなります。
リバウンド現象の防止方法
- 持続可能な食事計画: 極端なカロリー制限ではなく、持続可能でバランスの取れた食事計画を立てることが重要です。無理のないペースでの減量を目指しましょう。
- 十分なタンパク質摂取: 筋肉量を維持するために、十分なタンパク質を摂取することが大切です。筋肉量を保つことで、基礎代謝の低下を防ぐことができます。
- 筋力トレーニング: 筋肉量を増やすために、筋力トレーニングを取り入れることが重要です。基礎代謝を高め、カロリー消費を増やすことができます。
- ホルモンバランスの維持: 適度なカロリー摂取とバランスの取れた食事を維持することで、ホルモンバランスを安定させ、食欲のコントロールがしやすくなります。
- ストレス管理: ストレスを軽減するために、リラクゼーションや趣味、運動を取り入れることが重要です。心理的な健康を保つことで、食事に対する過度な執着を防ぐことができます。
- 段階的なカロリー増加: ダイエット終了後にカロリーを急激に増やすのではなく、徐々に増やすことで体が適応しやすくなります。これにより、リバウンドを防ぐことができます。
- 食欲の自己認識: 満腹感に従い、過食を防ぐために自分の食欲をよく観察し、必要な時にだけ食べる習慣を身につけることが重要です。
まとめ
ダイエット=カロリー制限というのは現在のダイエット界の常識の一つですよね。もちろん摂取カロリーが低ければそれだけ体重は減りやすくはなります。しかし、低カロリーの食品さえ食べていれば良い、根性で食べる量を減らしさえすれば良いという理論が、ダイエットを難しくしている一つの要因ではないでしょうか。
カロリーの質という考え方があります。同じカロリーだったらできるだけ栄養素が多い食材を選ぶという方法ですが、例えば同じ100kcalだとしても、ほぼ糖分と脂肪分、添加物だけのケーキと、食物繊維やビタミンなどの栄養素がたっぷりと含まれている焼き芋を食べるのでは体にとって雲泥の差があります。
意思の力だけで食事量を減らすのには限界がありますし、カロリーは参考にしつつも、カロリー制限一辺倒の「カロリー神話」から脱却することが大切だと思います。